道路から駐車場、土庇、玄関へと続くアプローチの足元を三種類の洗い出しで仕上げました、駐車場は川砂利入りコンクリートの洗い出し仕上げ、土庇は那智黒石の洗い出し仕上げ。そして、玄関の土間は弊社が試行錯誤を繰り返した末に完成させたオリジナルの洗い出し仕上げとしました。
洗い出しのアプローチ
名栗の格子塀
手斧(ちょうな)ではつった名栗(なぐり)の格子塀。昔から栗材に名栗加工を施すことが多いが、この塀は八溝杉の赤身材を名栗加工しました。
手斧を使いこなせる職人が少なくなってきている昨今に、あえて、今回のような意匠設計をすることで若い大工に技術を継承する機会を作ることも、設計者の重要な仕事のひとつであると考えております。
土庇
土庇の屋根は2寸勾配であり、上屋の屋根(3寸勾配)よりも緩い勾配にすることで、重心の低い安定した建物にみえるように設計しました。
柱、梁、垂木、軒裏板など土庇の全ての部材に杉の赤身材を使用することで、軒下の空間は引き締まった印象を醸しだいています。
柱は四方柾柱、化粧垂木は柾目材、軒裏板は吉野杉の柾板、そして桁は力強い板目(杢目)とし、柾目と板目を意図的に明確な使い分けをしてあります。また、面取り部分は部材に合わせて1mm、3mm、6mm、7.5mm、9mmと大きさを変えて削り、垂木に関しては約60度の猿頬面としています。このように、現在の住宅建築ではあまり重要視されていない工程を着実に積み重ねることで、自然とよい雰囲気の建築ができあがると考えます。
一方で、柱元の沓石は黒御影石を柱の小口より1.5mmだけ大きく加工して据えるなどの、伝統建築にはなかった独自のディテールも取り入れることでモダンな印象を漂わせています。
式台と框
玄関の式台(一段目)と框(二段目)は共木の欅板を使用しています。故に、2枚の欅板の木目や色合い、質感は限りなく近く、くどい印象を与えてはいないでしょう。
また、自然が創り出したしなやかな木目の流れを不自然に切ってしまうことなく、緩やかに曲がった木目に沿って製材、加工を施すことで、式台(一段目)の曲線と框(二段目)の曲線が異なる曲線で加工されているにも関わらず、違和感は微塵もないと思われます。
式台の下の黒い竹炭の束、白い洗い出し仕上げの土間、白いドイツ漆喰の壁。それらが欅板の温かみを引き立てています。
飾り棚
台湾楠
玄関の飾り棚には樹齢約1500年の台湾楠が使われています。希少価値が高く、葡萄杢と呼ばれる独特の木目と深い色合いが好まれ、昔から高級な木工品に使われてきた銘木であり、通常は建築に使われることのない木材です。
山武杉の建具
玄関奥の廊下に面する木製建具は、すべて樹齢約250年の山武杉の赤身部分の柾目板を使用しています。材種だけでなく産地、木目、色合いを揃えることで落ちついた空間となっています。
和室入口の木戸の納まりは、閉めきった時の見え方と開けきった時の見え方を対照的に見せるために細部まで計算尽くした設計をしました。そして材料を選定する力と高度な職人の技術をもって、イメージが具現化されています。
数寄屋建築の技法
八掛
扉や引き戸を設置するには通常、敷居、鴨居、方立といった枠材がなくてはなりません。しかし、時としてそれらの存在が空間全体のバランスを考える際に邪魔に感じることがあります。そのような時に、敷居、鴨居、方立をできる限り壁の中に隠し、それらの存在感を無くすために昔から使われてきた技法が「八掛」であります。
今回の建築においても、この「八掛」という技法を採用し、鴨居、方立の存在感を極力無くすことで、樹齢約250年の山武杉の板戸の美しさを際立たせる意匠設計となっています。
一本引きの格子戸と鴨居
樹齢約250年の山武杉の赤身部分の柾目材で組み上げた格子戸は通常とは少し違う組み上げ方をしています。
通常の建具には上桟(上框)と下桟(下框)という横材が上下にあり、それらの部材が正面に見えますが、今回の格子戸は上桟と下桟が縦格子の奥に隠れてほとんど見えないように組み上げてあります。これにより山武杉特有の力強い柾目の格子が前面に現れ、その魅力を最大限に引き出した格子戸となりました。
引手金物は江戸時代に建立されたお寺の本堂の解体修理工事を請け負った際に保存しておいた「かすがい金物」を削り出し、「引手金物」に造り変えた世界に一つだけの珍品であります。
鴨居
鴨居には槐(えんじゅ)が使われています。槐は延寿(長生き)・縁授(縁を授かる)などの漢字で書き表すこともあるとても縁起の良い木であり、魔(鬼)よけの木としてもよく知られています。深い焦げ茶色の木目と白い皮肌の独特のコントラストが特徴的であり、一昔前の建築では床の間の床柱としてよく使われていたが、鴨居として使用されている建築は見たことがありません。故に、槐であると見た人が気付くようにと、あえて槐の特徴である白い皮肌を一部残した意匠としています。
床の間
秋田杉
床板(とこいた)には樹齢約400年の秋田杉を使用しました。無数の割れが縦横無尽に走ってしまったかつての銘木を独自の手法により蘇らせました。すべての割れ目に真鍮が流し込まれ床板として仕上げられた姿は陶器に用いる「金継ぎ」を思わせます。
モダンな和室に映えるようにと選ばれた純銀製の無双釘は、経年変化も楽しめる代物であります。無双釘に掛けられた竹の一輪挿しも制作しました。
本棚と机
机と棚板は八溝杉の板目を使用し、背板は吉野杉の柾目を使用するなど、産地と木目を使い分けることで引き締まった印象となっています。また、単に全て赤身材で揃えるというだけではなく、微妙に黒みがかった赤色の杉材のみを厳選して使用することにより重厚な印象を与えています。
白杉の天井
材料は杉の柾目(追い柾目を含む)であり、かつ、見付けの白太部分が7割以上の材料を厳選し、天井の中央部分に向かうほど白太の占める面積が増えるように板が並べてあります。
板の表面は浮造り仕上げが施してあり、目透かしの底の深さは15mm(一般的には5mm程度)と深く、よって、木目がはっきりと浮き出ており、目透かし部分の影も濃くなっています。黒い線、白い木肌、美しい木目のコントラストを最大限に引き出すための工夫がここにも施しました。
欅の飾り台とテレビ台
テレビ台は欅板の流れた木目に沿って加工し、壁との間にあえて隙間をつくりだし、そこからテレビなどのコード線を通す納まりとなっています。
飾り棚とテレビ台は共に側面を斜めに削り落としてあり、実際の板厚を感じさせないすっきりとした印象になるようにしました。
また、欅板に関しても赤身のみを使用することで引き締まった印象に仕上げています。
キッチンカウンター
キッチンカウンターの腰板は山武杉(樹齢約250年)の縦張りとしました。12mm、15mm、18mm、21mmの4種類の板幅の材を不規則に並べ、かつ、隣り合う材に1.5mmの段差をつける納まりとすることで、正面からと斜めからでは全く異なる見え方がする意匠としました。
カウンターの天板に綺麗な小節が点々とバランスよく並んでおり、綺麗な木目をした杉板をより味わい深い雰囲気にしている。一方、カウンター下の方立には力強い節が在り、「節」も楽しめる数寄屋師の感覚がここに活かされています。
カウンターと繋がる上下の方立の見付け幅(板の厚み)は施工性や必要強度を考慮して方立の厚みを36mmとしたが、リビング側から見た時の方立の見付け幅は15mmと細くした。リビング全体のバランスを考え、方立が主張し過ぎないようにする意匠設計であり、お茶室などの数寄屋建築においては、必要な強度を保ちつつ見た目を軽やかに細く見せる工夫が随所にみられるが、これもその種の工法であります。
また、天板の木目と方立の木目が綺麗につながっている納まりとしました。
トイレ
手洗い台も樹齢約400年の秋田杉であり、床の間の床板と同じ真鍮を使用した加工が施してあります。また、手洗い台の下に設置されたペーパーホルダーとタオル掛けも真鍮製のものに独自のダメージ加工を施し、樹齢400年の秋田杉の雰囲気に合わせてあります。
笠間焼の陶芸家さんに特注で焼いていただいた洗面ボールも、樹齢400年の秋田杉の雰囲気に合うようにと、大きさ、高さ、縁の形、色味、質感、排水口の形状など細部にこだわり設計しました。また洗面ボール廻りの水撥ねを考慮し、一部に鉛張りの壁を立ち上げました。程よいシワや凹凸が景色となり、経年の変化も楽しめます。
ウッドデッキ
幅240mm、厚み36mmの美しい木目の一枚板を整然と並べた能舞台のようなウッドデッキは見た目の良さだけではなく、メンテナンス性や耐久性を重視して設計しました。
ウッドデッキの天板は杉の赤身です。腐れやシロアリに強い赤身材とはいえ、ウッドデッキによくつかわれているウリンなどのハードウッドに比べれば耐久性は明らかに劣ります。故にハードウッドを使用したウッドデッキのように単純に上から板を打ちつけて組み上げる施工方法では万全とは言えません。
雨が降った時に水が溜まらない、そして早く乾く設計が重要となります。材料同士が重なり合っている箇所や継ぎ手部分に水抜き穴や勾配をつけて水を逃がす仕組みが施されています。そして一番大事なことは、傷んだ部材だけを簡単に交換修理できるような施工方法にしておくことです。
伝統ある確かな技術で納得いただける心を込めた工事をご提供いたします
概要
会社名 | 株式会社工匠常陸 |
---|---|
住所 | 〒300-0069 茨城県土浦市東並木町3448 Google MAPで確認する |
電話番号 | 029-869-8915 |
営業時間 | 8:00~18:00 |
定休日 | 日曜日 |
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